研究テーマ: 宇摩地域における情報交流について  

1.全体要旨
 「情報の壁の撤去」
 「共通メディアの整備による一体感の醸成」
 宇摩地域は四国の中央に位置し、古来より交通の要衝として栄えてきた。現在
も四国高速道路網の中央結節点として、四国中央都市としての可能性を十二分に
備えている。活力ある地場産業、海・山・湖の豊富な自然、高速道路網の整備等
による利便性。この基盤をもって、この宇摩が一つになればもっといいまちにな
るのではなかろうか。
 この宇摩が一つにならない、否、なれない理由の一つとしてお互いのコミニュ
ケーションの不足があるのかも知れない。お互いが交流しあって初めてより親密
な関係が出来る。
 そんな想いで「情報をきっかけとした一体感の醸成」をめざし、タウン誌・コ
ミニュティFM・CATV、そして現状の市報等について研究し、宇摩地域での
可能性を求めた。その中でも現状で最も効果的なものとして「コミニュティFM」
に主力を置き研究した。
 開局準備中の松山、開局済の丸亀・坂出と訪問し、資金的、人的にも宇摩地区
でも可能ではないかと感じた。この電波による部分と従来の紙や電子的ネットワ
ークによる部分とを相互に活用していけばこの地域独特のネットワーク社会にな
るであろう。


研究テーマ選択の背景
 地理的優位性はあるものの今一つ連帯感に欠けるのは何故だろう。その一つに
情報網の寸断・遮断があるのではなかろうか。 現在は市町村の行政枠を越えた
情報網は「広域市町村圏組合」と県域放送、県域新聞(全国紙の県内版)、それ
と口コミしかありません。これが「地域エゴ」へと繋がっているのではないかと
感じ、この状況を打破し宇摩が一つとなって、これからのまちづくりの基盤とな
る「一体感の醸成」をめざした。
 そして昨今の高度情報化社会への対応としても、その基盤としての高速通信網
の必要性にも駆られ、「取り残された地域」「通過都市」にだけはならない事を
願う。


3 研究テーマに基づく提言項目と体系図

研究テーマ:宇摩地域における情報交流について

 提言1 「紙のメディアによる情報交流」についての提言
   @ 市町村広報紙の利用
   A 地域タウン誌の創刊・育成への支援
   B 新聞折り込みチラシの活用
   C FAX情報提供システムの構築
   D 四国情報の受発信機能の構築(四国中央の地の利を
     活かして)

 提言2 「リアルタイムな情報交流」についての提言
   @ コミニュティFMによる情報提供
   A CATVによる交流
   B インターネットによる交流
   C 防災広報無線の不使用によるイメージアップ
   D 四国情報の受発信機能の構築(四国の情報が最も集る地域へ)

 提言3 「コミニュティFM局」の創設・運営についての提言
   @ 行政区域を越えた広域情報圏の形成
   A 広範囲な地元情報の即時的な提供
   B 地元住民が参加する身近でオープンな情報発信拠点づくり

4 各提言および具体的事業について
提言1 「紙のメディアによる情報交流」についての提言

 一般的に最も容易な手段として「紙」がある。「紙のまち」である為ではな
いが、ユーザーとしていつでも何処でも誰でも簡単に見れる事から、最低限と
して必要な手段である。現在構築されているルートの再検討、新たに必要な手
段等をまとめた。

@ 市町村広報紙の利用
 行政が発行している市町村広報紙は全戸に配布される。これに宇摩地域内の
事業案内等の行政枠を越えた情報交換が求められ、すでに部分的に交換されて
いる。
 そしてこれをもっと発展させ、宇摩全体として広報誌を作成し、各行政独自
の部分は「市町村より」として付け加える。これによりより一層の情報交換が
図られるのではなかろうか。

A 地域タウン誌の創刊・育成への支援
 現状書店に並んでいるのは松山と香川のタウン誌。宇摩がその谷間になって
いる。宇摩に人を呼ぶのと同時に宇摩の人が簡単に出かけれる内容が求められ
る。本年度の委員会を始める時にはタウン誌が発行されたため、期待していた
が、やはり採算に合わなかった様であり。何らかの育成・支援策が求められる。

B 新聞折り込みチラシの活用
 各戸配布される新聞に折り込み広告として定期的に載せる方法がある。すで
に商業ベースになっているものもあるが、記事としての部分にボリュームを持
たせて、ミニタウン誌の様相にしてはどうだろうか。行政情報の無料での掲載
は、業者・行政・住民すべてにメリットがあると思う。

C FAX情報提供システムの構築
 最近は家庭にも広がっているFAXを使って、情報提供する方法がある。要
望に対してすぐに答えれるFAXアンサーシステムも検討してはどうだろうか。
ビジネスとして自動的に情報提供するシステムも目につく。事業主体、有料・
無料を含めて検討に値する。

D 四国情報の受発信機能の構築(四国中央の地の利を活かして)
 宇摩の情報交流がある程度進んだ暁には、四国中央に位置する地理的優位性
を活かして、図書館の一角等に、四国に関する書籍・雑誌や、四国のタウン誌
・地方紙(新聞)・歴史資料や電話帳・地図など、ありとあらゆる「四国情報
を集めたコーナー」を設置し、宇摩だけでなく四国各地の人々にも情報提供を
行うまちづくりを進める。

提言2 「リアルタイムな情報交流」についての提言

 この地域に欠けているものとして即時性を持った情報伝達手段である。もし
災害が起こった時に1カ月単位で出るものや数日単位ではどうしようもない。
数分単位でのものが要求される時がある。災害と言っても何も震災だけではな
い。例えば交通事故や火事でどこそこの部分が一時通行止めや渋滞になってい
るという内容。これは数分後には不要になるものだが、その時点では車に乗り
その付近を通る予定の人には必要な内容。これは県域放送では決してカバー出
来ない内容です。

@ コミニュティFMによる情報提供
 阪神大震災以来クローズアップされた。音声だけによる一方的な発信ではあ
るが、会社設立・番組制作等比較的安価にできる。そして域外からの訪問者に
も提供ができるのが特徴。現段階では最も有望な手段。

A CATVによる交流
 「隣の火事を県都経由で知る」のではなく、地元の事として地元発信で知り
たい。そして自分たちの主張が言える地域でありたい。そればかりではなく、
高速な通信網としても必要な社会基盤である。初期投資を考えると、当面「電
波による地域TV局の実現」といった規制緩和は困難なことだろうか。

B インターネットによる交流
 インターネット=wwwという感があるが、某ブラウザが「ナビゲーター」
から「コミニュケーター」に変わる事にも象徴されるように「情報提供」に加
えてコミニュケーションのツールへと発展している。そしてその機能を十分発
揮するには、より高速な通信回線が求められる。当面の課題は基本的な資料を
充実させる事と情報提供のシステムづくりから始める。

C 防災広報無線の不使用によるイメージアップ
 「うるさい」「内容が聞こえない」とあまりいいイメージではない防災広報
無線をこの際不使用にしてはどうだろうか。コミニュティFMが出来れば必要
性がなくなる。FMにより、より木目細かな内容を提供していくことが可能に
もなるし、地域のイメージアップにもなる。

D四国情報の受発信機能の構築(四国の情報が最も集まる地域ヘ)
 宇摩地域は四国の中央に位置することから、住民は他の3県の情報も欲しが
っている。コミュニティFMでもCATVでも、四国の他の放送局と連携して
情報の相互提供・交換を行うとともに、宇摩地域を四国中にアピールできる番
組・ソフトの制作に努める。

提言3 「コミュニティFM局」の創設・運営についての提言

●コミュニティFM局に着目した理由
 全国のCATV局で赤字の話が聞かれる中、宇摩地域でCATV局を開設す
るのは、当面難しい。CATVより安くでき,行政区域を飛び越える電波の力。
もし実現したら、宇摩初の情報発信拠点となるのではないか。
 単一の市町村での開局が基本であるらしいが、「宇摩の情報共有化」をめざ
す私達にとって、コミュニティFM局ほど有効な手段はない。

●四国電気通信監理局と先発のコミュニティFM局を訪ねて
(1)四国電気通信監理局放送課 H8.9.19
 コミニェティFM局の制度及び趣旨について説明を受けるとともに、低利融
資制度や放送法、会社設立までの手順等について、わかりやすく教えていただ
いた。全国で現在45局。来年には60数局になる見通し。周波数が限られて
いること、また瀬戸内の電波事情から取り組むなら急いだ方が良いことを知っ
た。そして,1市町村をエリアとするのが基本だが、広域で取り組むことも全
く不可能ではないことを知った。

(2)まつやまシティ放送株式会社 H8.9.19
 予備免許を目前にして慌ただしい最中、4月の開局に向けての取り組みや考
え方を伺った。出資者の募集、運営体制、行政との関係等々、大変参考になる
知識・情報を得た。赤字も予想される事業ではあるが、松山市の都市としての
魅力を高める社会基盤の一つとして、何とか定着させたいという気概を感じた。

(3)エフエム・サン株式会社 H9.2.7
 CATV局であり番組制作会社でもある香川テレビ放送網鰍ニ同居した坂出
市のコミュニティFM局。まだ軌道に乗っていないと言われていたが、商店街
にサテライト・スタジオを持ち、CATVで培ったノウハウと人材をフルに活
用している様子。まだまだ知名度と浸透度が低いと謙遜され、取材をしまくっ
てPRしているとのこと。大変な苦労をされていることを知った。

(4)エフエム・セト株式会社 H9.2.7
 丸亀市にあるFMセトは、前述のFMサンと同期放送も行う兄弟局のような
コミュニティFM局。12月末に開局したばかりの局舎内は、最新鋭のコンピ
ューター制御により、シンプルだが情報発信拠点にふさわしい造り。
 土器川沿いのその場所には昼間,女子中高生が押しかけてワイワイガヤガヤ
生放送を行っているとのこと。地域の情報が手作りで伝えられていて、うらや
ましかった。


@行政区域を越えた広域情報圏の形成
 マーケットを考えても宇摩は一つの商圏である。民間のビジネスを考えても、
個々の市町村ごとにPRするよりも、宇摩一つでPRできることのメリットの
方が大きい。情報を共有化することは、施設・サービス・イべント・モノを宇
摩地域で共有することである。行政区域を越えて広域情報圏が形成されること
は、必ずや「圏民」の生活をより豊かなものに高めることにつながる。

A広範囲な地元情報の即時的な提供
 県都経由でのニュース性の高い地元情報の提供も決して不必要ではない。
 しかし。松山の視点からはこぼれ落ちるが、地域にとっては重要な情報も数
多い。その地域の、その地域による、その地域のための情報提供。先発のコミ
ュニティFM局では、地元情報の提供についてはまだまだ十分かどうかはわか
らないが、広範囲な地元情報を即時的に(リアルタイムで)提供するためには、
コミュニティFM局が最適で欠かせないと思う。

B地元住民が参加する身近でオープンな情報発信拠点づくり
 現状では、住民は地元情報に関して行政・民間を問わず、いつも受け身の形
で受容していると言える。何らかの情報や意見を持っていても、自ら気軽に参
加できる場はなかなか存在しない。コミュニティFM局では、直接あるいは電
話やはがき、FAXなどで地元にいながら地元の情報を提供することが容易と
なる。住民が主役となり、情報発信することも可能な放送局。何とか実現の方
法を見いだしたい。


               戻 る